デンマークでコロナ前線に立つ公務員への見返りと赤字に転じた国家財政の行方

北欧デンマーク通信

デンマークの教育や生活、働き方、制度やデンマーク人の考え方について

こんにちは！デンマーク公認ライセンスガイド・通訳・コーディネーターのウィンザー庸子です。

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デンマークの人口は約580万人で、これは兵庫県の人口規模とほぼ同じとなっています。ちなみに、コペンハーゲン市の人口は市内が約65万人、市外の住宅地なども入れたコペンハーゲン圏では約130万人で、これは神戸市の人口規模に匹敵します。国土の大きさは九州くらいです。

我が家には、デンマーク人の主人、デンマーク人でもあり日本人でもある、中学校1年生と、4年生の男子2人と、1歳のちょうどお誕生日の日から保育園に入った3歳の女子1人と、日本人の私がいます。

そこで私たちがデンマークで生活する中で感じる、デンマークの教育や、仕事や、生活や制度、デンマーク人の考え方について、お話したいと思います。

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デンマークでコロナ前線に立つ公務員への見返りと赤字に転じた国家財政の行方

デンマークでは、介護職員、医療従事者の大半、保育士の大半は公務員です。コロナ禍において、他の職場が在宅勤務となる中で、コロナで影響を最も受けた人達の為に、最前線で働いてきました。

2月にデンマーク公務員80万人の給与水準の改定が行われるに際して、前線に立つ公務員の多くは昇給を求めています。

デンマークの人口は約580万人、その内就業者数は約270万人なので、デンマークでは就業者の3.5人に一人が公務員です。高齢者介護施設や障碍者福祉施設、医療機関のほとんど、保育園と高等教育機関のほとんどが公立であるため、公務員がカバーする職種が日本よりもずっと多いです。医療は県、子供の歯科は市（大人は民間の歯科で有料）、障碍者福祉施設と高齢者介護施設は市、保育園と小中学校は市、高等学校は県、専門教育機関と大学は国に帰属しています。

給与水準改定の集団交渉は、3段階に分けて行われます。1段階目は国家公務員、2段階目は市の公務員、3段階目が県に当たるレギオンの公務員です。

1段階目の交渉が始まった所で、国が提示できる予算の枠は、全体の給与水準の6.75%の上昇だということが分かりました。

この数字は、雇用者協会からは責任のある対応とみられている一方で、看護師協会と保育士協会からは、幅の狭い落胆させるものだと受け取られています。

コロナ危機は前線に立つ公務員の重要性を再認識させるものでしたが、同時に国家財政を黒字から赤字に転換させるものとなりました。更には、コロナ危機によって、民間企業での失業率は上がり、将来の成長に大きな疑問が呈されることとなりました。

公務員の給与交渉では、民間での今後の給与水準の推定上昇率が重要な決定要素となります。常に民間の給与水準よりも公務員の給与水準は少し低く設定されているからです。

最新の民間の給与水準の推定上昇率は7.6%となっていますが、この数字は良すぎて、不透明な経済状況の影響を鑑みると、現実的ではないと言われています。従って、公務員被雇用者代表さえも、公務員の給与水準を高く上昇させてしまうと、結果的に民間の上昇率を上回る給与上昇となってしまう可能性があることを危険視しています。

収束を見せていないコロナ危機は、給与水準の交渉において被雇用者が持つ最大の武器であるストライキを不可能なものにしています。

社会的な危機をもたらしているコロナ対応において中心的な役割を果たす前線の従事者が職務を放棄することはできないという難しい状況があります。そして、国全体で緊急対応が必要とされている状況の中のストライキは、国民からの支持を得ることもできないでしょう。ストライキは、始まる前から国の介入によって抑止されてしまうことでしょう。

更には、2018年の給与水準交渉時には、何か月にも渡って大きな闘争が続き、混乱を招きました。今回の交渉では、雇用者側、被雇用者側双方共、こうした事態は避けたいと考えています。

その為、今回の交渉では、双方が開始以前に書面で、交渉をより管理下に置かれた関係の下に行うことに合意しました。例えば、メディアに重要な情報を開示する際には、お互いに事前に連絡することに署名しました。更には、交渉に携わる双方の代表者が一緒に外国への視察に行き、交渉開始前に個人的な関係を強化する試みもなされました。

しかし、それでもなお、コロナ禍において、被雇用者の不満が爆発する可能性は否定できません。前線に立つ公務員をどのようにして定義するのか、例えば保育士はコロナワクチンを国民に配布する為にコンピューターで仕事をしている公務員よりも価値あるものとされるべきなのか、合意に至るのは難しいと言えます。

更に、全体の予算に合意がなされた後も、市と県では、その限られた予算を職員から如何に納得と承認されるよう配分するかという問題が残っています。

デンマーク政府は、解雇の可能性が民間よりも低い国家公務員（しかし、デンマークでは税収が下がると省庁でも集団解雇を行いますので可能性はゼロではありません。）が今後3年間に期待できる賃金上昇率として、4.42%を確保しました。これは、財務省が予想するインフレ率が4.4%が持続することを前提とすると、ごくわずかの上昇率となります。

しかし、被雇用者からの要請では、低賃金に設定されている職種の公務員の給与を交渉によって上げることが期待されています。現状では、給与水準の上昇が伝統的に給与の何パーセントという形で行われている為、もともと給与水準の高いオフィス職の公務員は給与上昇によってより多くの金額を得られるのに対し、介護職員をはじめとするもともと低賃金に設定されている公務員が給与上昇によって得る金額が低くなってしまうという問題があります。そこで、低賃金の公務員の給与水準をより高く上げ、高賃金の公務員の給与水準の上昇を抑える為に、給与水準の上昇を、従来のパーセントではなく金額での上昇に変更することを提案しています。

コロナ危機で一部の公務員は多額の昇給を功績の見返りとして求めていますが、残念ながら国家の財政を鑑みると期待に応えるものとはならない見込みです。全体の予算をどのように配分しているかということで解決の道を図るしかないことが予見されています。

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北欧の福祉や環境政策、さらには心地良いを意味するヒュッゲで知られるデンマーク。

国民みな共働きでワークライフバランス重視の考え方、生き方の、実際どうなの？を、

2003年からデンマークに在住の公認ライセンスガイド・通訳・コーディネーター＆主婦で３人の母親の、

ウィンザー庸子がお伝えします。

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